使う粉は、北海道・江別と長野・東御のみ。産地を絞ったのは、こだわりではなく必然です。
何年もかけて農家と話し、食べ比べ、
ここしかないと決めた、ふたつの場所です。
今年の夏は雨が多かった、乾燥が続いた——
そのひとことで、水分量と配合をそのつど変える。
同じレシピが、毎年少しずつ違う味になるのは、
粉がまだ、生きているからです。
機械は使いません。
生地の状態を手で感じながら、一本一本成形します。
今日の温度と湿度で、発酵の進み方が変わる。
だから毎日、同じ一本にはなりません。
焼成温度は、手のひらの感覚と目の色で測ります。
数字では教えられない、長年の積み重ねがそこにあります。
一九九〇年に築いた石窯は、いまも現役です。
ひびひとつ入れず使い続けてきたのは、
修繕と手入れを怠らなかったからではなく、
毎日火を入れてきたからだと思っています。
窯は、使われることで生きている。
天然酵母は、果実と水だけで育てた自家培養種。
十年、継ぎ足し継ぎ足し、同じ種を守り続けています。